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「農学」の在り方について

はじめに

本稿は、東京大学大学院 登 達也さんからご寄稿をいただき掲載したものです。

農学

「農学」という学問について寄稿させていただきます。

「農学」とは農業・林業・水産業・畜産業などに関わる、応用的な学問とされています。「応用的」というのは、我々の生活に役立つことを目指しているという意味です。この農学の在り方が体現された例を1つご紹介します。福島第一原発事故を受けた農業現場での問題に対する、東京大学大学院農学生命科学研究科の取り組みです。

事例:福島第一原子力発電所

福島第一原子力発電所の事故では、被災地のほぼ 8 割にあたる地域が森林も含め、農業関連地と言われています。農業現場における科学的知見がわかることこそ、農業復興への第一歩であるという考えに基づき、事故直後から農学生命科学研究科では、各専門家から農業の復興に役立つ研究計画が集められました。その結果、約50人からの提案が出されました。ただ、農業関連の被災地現場とは自然の場そのもののでもあり、その研究対象は複雑で、ひとつの専門分野の研究だけでは手に負えないことがほとんどです。そこで、農学生命科学研究科では集められた研究計画を穀物、畜産物、魚介類、フィールドなどの分野にわけた上で、各分野を串刺しにする形のチームが結成されました。そうすることで、例えば、”稲作”についてはイネの栽培の専門家、土壌の専門家、水利の専門家などが集まって議論することが可能となり、初めて汚染米が出てくるメカニズムが解明されているのです。

これらの研究の成果については、「放射能の農畜水産物等への影響についての研究報告会」という場において、定期的に報告がなされており、2013年4月20日に第6回目が開催されます。

日時 2013年4月20日(土) 13:00~17:00
場所 東京大学弥生講堂・一条ホール
対象 一般(どなたでも参加できます)
定員 300名(当日先着順、事前登録不要)
参加費 無料

世界への発信

このような活動を世界への発信することを目的とし、研究成果を英語でまとめた本がSpringer社より出版されております。こちら、オンライン版は無料でダウンロードすることができます。
http://link.springer.com/book/10.1007/978-4-431-54328-2/page/1

人々の生活を豊かにすること目指す「農学」。様々な専門性が融合することで、より大きな価値を生み出していけることを、この取り組みは示しているのではないでしょうか。