放射線で品種改良を

今回は植物の放射線育種についてご紹介します。

放射線育種とは、植物に放射線(x線、γ線、電子線、イオンビームなど)を照射することにより、遺伝子を1つか2つ壊すことで突然変異を起こし、形質が様々に変化した突然変異帯の中から有用な形質を持つものを選抜する品種改良法です。

植物で人為突然変異を誘発した最初の成功例は、1928年に米国ミズーリ大学のStadler博士が、トウモロコシやコムギの発芽種子にX線を照射した実験であるといわれています。

品種改良の方法として、遺伝子組換えというものがありますが、放射線育種はこれとは全く別の技術です。
遺伝子組換え技術が、対象の植物に本来存在しない遺伝子を導入することで新しい品種を作るのに対し、放射線育種は植物が本来持っている遺伝子を壊すことにより変異を促すのです。簡単にいうと、遺伝子組換えが遺伝子をプラスするのに対し、放射線育種は遺伝子をマイナスさせるものなのです。

この技術の利用例として病気に強い果物を作るという試みが昔からなされています。
「二十世紀梨」は非常に良い品質を持ち、青ナシの主要品種として栽培されてきました。しかし、ナシ黒斑病という病気にかかりやすく、それを防ぐために多大な労力が払われてきました。そこで、γ線の照射により突然変異体を得る実験が行われました。その結果、黒斑病への抵抗性を持つ以外は二十世紀梨とほぼ同じ性質を持つ梨を生み出すことに成功しました。
この梨は「ゴールド二十世紀」と名付けられ現在も販売されています。

この他にも様々な場面で放射線を利用した技術が活躍しているので、またの機会にご紹介します。