放射線で害虫と戦う

先週ご紹介した「放射線で品種改良」に引き続き、農業における放射線の利用についてご紹介します。

帰化生物

帰化生物とは、海外から風、渡り鳥、船などによって持ち込まれた生物が野生化し定着したものです。動物では、ゴキブリやアメリカザリガニ、植物ではセイタカアワダチソウやセイヨウタンポポなどが良く知られています。

日本に定着した帰化生物の中には、在来種の絶滅等自然に対して悪影響を及ぼすものがあります。そして、それらの駆除、根絶は簡単ではありません。あまりに分布が広がっていたり、他の種にまで影響を与えてしまう可能性があるからです。

帰化生物と放射線

帰化生物の根絶に放射線が活躍した例があります。東南アジア原産のウリミバエとの戦いです。ウリミバエは南西諸島で繁殖し、多種の作物の果実に卵を産み、幼虫が実を食い荒らしていました。このウリミバエを根絶するため、放射線が利用されたのです。
まず最初に、人工飼育した雄のさなぎに放射線を照射して、生殖能力の無い個体を作ります。この「不妊化」の後、さらに羽化した成虫を自然に放しました。不妊化した雄と交尾した雌の卵はかえりません。しかもウリミバエは一度しか交尾しないため、世代が交代するごとにその数は減り、最終的に根絶することに成功しました。

放射線による不妊化は、予期しない他の変異を引き起こしてしまうリスクや放射線耐性を持つ生物の発生などのリスクを無視することはできませんが、適切な計画の下、様々な国で利用され農業の安定に役立っています。