再び「オーキシン」

今回も、この連載で何度か登場している「オーキシン」という植物ホルモンのお話です。

植物ホルモン

植物ホルモンというのは、植物体内で作られ、ごくわずかな量で植物の成長や反応を調整する物質です。そしてオーキシンには「植物の成長を促進する」働きがあります。また「重力の方向に移動する」「光を避けて移動する」という特徴もあり、これが根が下に伸び、葉や茎が上に伸びる理由となっているということをご紹介しました。別の記事では、キャベツが丸くなる原因もオーキシンの作用であることを説明しました。

 最適濃度の成長促進・阻害

オーキシンには成長促進作用がることは間違いがありません。ところがオーキシンはそれだけではないのです。その働きには「最適濃度」というものがあり、多すぎると逆に成長を阻害するという性質についても前述の記事で触れていたことをご記憶でしょうか。この「最適濃度」は植物の器官によっても、植物種によっても違います。このことを利用して、人工合成されたオーキシンが除草剤として使われる場面があります。例を挙げると、イネの「最適濃度」は水田に生える雑草よりも高いので、適切な量の合成オーキシンを散布することで雑草だけを殺すことができます。

枯葉作戦の成分

このように便利なオーキシンですが、実はベトナム戦争時に米軍の「枯葉作戦」で大量に散布された「枯葉剤」も実は合成オーキシンだったのです。使い方を誤れば大変な悲劇を招くことも理解しておく必要があります。

植物体内でのオーキシンの生合成経路は、2011年になってようやく解明されました。人工合成ではなく植物が作った「天然」のオーキシン利用の可能性が広がったということです。環境や人間の生活に役立つ利用に期待ですね。