カテゴリー: Vegetablesgreens

  • 再び「オーキシン」

    今回も、この連載で何度か登場している「オーキシン」という植物ホルモンのお話です。

    植物ホルモン

    植物ホルモンというのは、植物体内で作られ、ごくわずかな量で植物の成長や反応を調整する物質です。そしてオーキシンには「植物の成長を促進する」働きがあります。また「重力の方向に移動する」「光を避けて移動する」という特徴もあり、これが根が下に伸び、葉や茎が上に伸びる理由となっているということをご紹介しました。別の記事では、キャベツが丸くなる原因もオーキシンの作用であることを説明しました。

     最適濃度の成長促進・阻害

    オーキシンには成長促進作用がることは間違いがありません。ところがオーキシンはそれだけではないのです。その働きには「最適濃度」というものがあり、多すぎると逆に成長を阻害するという性質についても前述の記事で触れていたことをご記憶でしょうか。この「最適濃度」は植物の器官によっても、植物種によっても違います。このことを利用して、人工合成されたオーキシンが除草剤として使われる場面があります。例を挙げると、イネの「最適濃度」は水田に生える雑草よりも高いので、適切な量の合成オーキシンを散布することで雑草だけを殺すことができます。

    枯葉作戦の成分

    このように便利なオーキシンですが、実はベトナム戦争時に米軍の「枯葉作戦」で大量に散布された「枯葉剤」も実は合成オーキシンだったのです。使い方を誤れば大変な悲劇を招くことも理解しておく必要があります。

    植物体内でのオーキシンの生合成経路は、2011年になってようやく解明されました。人工合成ではなく植物が作った「天然」のオーキシン利用の可能性が広がったということです。環境や人間の生活に役立つ利用に期待ですね。

  • 「ただの虫」がただの虫ではない理由

    田畑には、多くの生物がいます。水田を例にとると生息している生物の数は約600種類いると言われています。それら生物は、人間に役立つ「益虫」と、某かの被害を作り出す「害虫」に分類されることが知られています。しかし、益虫でも害虫でもない「ただの虫」もたくさんいることをご存知でしょうか。田畑にとっては、この「ただの虫」も含めてすべての生物が生態系として必要であり、どれひとつかけてもバランスが壊れてしまいます。農薬等を使って単純に害虫を駆除してしまうと、生態系が崩れ、結果として農作物に悪影響が出てしまう場合があるのです。

    生態系を保持するには

    それでは、どのように生態系を保持すれば良いでしょうか?600種類に及ぶ生物の生態系を人間がすべてコントロールすることは簡単にはできません。田畑の周りに非農地をもうけ、茂みを作り、様々な生物が生息できるようにすることで、複雑な生態系を維持することができると言われています。すなわち自然環境の保全が、生物の多様性を実現し、どんな農薬よりも良い効果を発揮するかもしれないのです。

    益虫も害虫も、そして「ただの虫」もとても大切な生物なのです。

  • 商標としてのブランド野菜

    当社青山ファームのブログでもご紹介しておりますとおり、最近の野菜や果物は、ブランドと切っても切れない関係にあります。大きさ、色、香り、そして味、それと同じくらいブランディングは重要になりつつあります。
    特許庁では、野菜や果物のブランディングを保護、育成する目的で、地域団体商標登録制度を用意しています。この制度は、地域ブランドの保護・育成を図るため、平成18年4月1日から導入されました。

    Wikiには、全国の商標の一覧が掲載されています。

    地域団体商標の一覧 – wiki

    地域団体商標登録制度を検討している方々へのセミナーも、特許庁で開催されているようですので、該当する団体の方はまずはセミナー参加をご検討されてはどうでしょうか?

  • 究極の過酷な環境 塩トマト

    熊本県八代地方のブランド野菜に、塩トマトがあります。八代地方では、以前より海岸の干拓地でトマトを育てている農家がいました。干拓地でのトマト栽培は、塩分のために水分がトマトに十分吸い上げられる、いわゆる塩害と同じような状況になっていたそうです。そのトマトは、通常のトマトと比較して甘く、しっかりとした味になっていることは知られていましたが、当時としては売り物になりませんでした。
    フルーツトマトが話題になり始めた1995年頃からブランド野菜として、塩トマトが売り始められました。最近では、この八代地方の塩トマトの一部は、「幻のトマト」と呼ばれ入手にしくくなるほど人気になっています。
    現在この「塩トマト」という名称は、宮城等東日本大震災で塩害を受けた農地の復興のために栽培されたトマトにもつけられ、話題になっています。
    単に甘いだけではなく、農地の復興にも一役をかっているのが、ブランド野菜「塩トマト」なのです。

  • 明日またとれるアシタバ

    アシタバは、日本原産の多年草です。Wikiにも紹介されているとおり、東京が生産量1位の野菜です。「夕べに葉を摘んでも明日には芽が出る」が由来し、アシタバと呼ばれるようになりました。アシタバの小さく丸い白い花から、学名は天使を意味するAngelica keiskeiとつけられています。
    昨今の健康ブームもあり、アシタバの成分が含まれた健康食品や青汁もたくさん販売されています。

    東京都内の飲食店でも、野菜を中心に品揃えしているお店では提供されることもあり、サラダやグリーンスムージー等が多いようです。キトサンやカルコン、クマリン類が「体に良い成分」とされることが多いようで、肥満防止や便秘防止などに効果があると紹介されていることも多いようです。
    東京の伊豆諸島のお土産品の中には、このアシタバを使ったクッキー等もあるようですが、根強いファンがいるのが、「明日葉茶」です。

    明日葉茶であれば、比較的くせがなく飲むことができますので、野菜が少し苦手な方にもよいかもしれません。

  • バブルと植物のウィルス感染

    ウィルス感染と聞くとネガティブなイメージがありますが、ウイルスに感染した植物が人間にとって意外な価値を持つものとなることがあります。

    チューリップ・バブルという事件をご存知でしょうか。
    これは1637年にオランダで起った世界初のバブルです。この時期はオスマン帝国から輸入された珍しい模様のチューリップに人気が集中し、その人気に便乗した投機家の参入もあり、異常な高値がつきました。球根1個に現在での数千万円といった値がつけられ、豪邸1つと交換できる程でした。しかし、バブル崩壊の日は突然訪れました。価格が100分の1に暴落し、オランダ全土をパニックに陥れたのです。

    実はこの珍しい模様は、球根に付着したウィルスによって引き起こされた病的な症状であったということが、この30年後に判明しました。病気ですので通常のチューリップと比べて寿命が短くなります。

    人々を狂気に走らせたチューリップの美しさの裏側には、どこか儚くも哀しい事実があったのですね。

  • 田んぼの水温

    弊社がご協力を差し上げております研究グループ「Open Agri JP」では、様々な議論が行われています。昨年8月からスタートしたこの研究グループで、最初に議論されたのが、「田んぼの水温」です。これまで品種改良が中心だった米作りにおいて、育成環境をコントロールすることによって収穫量を増加させたり、味を向上させたりしようという試みの一環です。調べてみると、農家の方によって水温に対する意識の違いが明確になってきました。気にする方としない方が両極端なのです。

    実は、気にされる方の多くが雪解け水等を水源として稲作を行っている方々でした。古くから冷たい水を使った稲作は、以下のような対策がとられてきました。

    • 水田に水が入り込む場所だけに寒冷地向きの品種を植える
    • 水田に入り込む前の水路に複数の段をもうけ温度を制御する
    • 水田に入り込む直前に、水田の周りをさらに一周水路を造り温度を制御する
    • 水田に入り込む前の水を人為的に暖める

    などです。雪解け水を利用しない場合には、このような工夫は不要で、水温に関して気を配る必要があまりないということのようです。

    今後弊社としても、研究グループ「Open Agri JP」の協力各社とともに「田んぼの水温」に関しても研究活動を続けて参ります。

  • 蜂の子

    蜂の子は、その名のとおりクロスズメバチ等を調理した料理です。地方により甘露煮、佃煮、炊き込みご飯等として食べられています。昨日、弊社代表の田中秀樹も、長野にて蜂の子の佃煮を食したようで、美味であったそうです。

    長野安曇野 蜂の子

    主に食されている地域は、岐阜県、長野県、静岡県、宮崎県等ですが、既に高級品で日常的に食されてはいないようです。栄養成分はビタミンB2、鉄、銅、マンガン等が豊富です。
    最近は、Amazonなどでも、蜂の子の瓶詰めを購入することができるようです。ご興味のある方は、注文されてみてはどうでしょうか。

  • 「スイカの旬が6月」の秘密

    千葉県船橋市にほどちかい「船橋農産物供給センター 味菜畑」では、6月のはじめにスイカが入荷します。スイカと言えば夏、というイメージがあるとおり、6月の時期だと、「きっと小さいのだろう」とか「きっと甘みは少ないのだろう」と思われると思います。

    「今が旬」「しかも大きい」スイカ

    船橋農産物供給センター 味菜畑」に入ると、入り口の看板に、

    祭ばやし スイカ 今が一番美味しい

    と書かれています。お店の入り口を抜けるとすぐに、真夏にならないと見かけないような大きなスイカが陳列されています。大変驚くと同時に、自分の常識を疑い始めるほどでした。

    からくりは簡単

    さっそくお店にいた農家の方に、スイカについてお話をお伺いしたところ、からくりは簡単、「ハウスで作られている」とのことでした。ハウス栽培だと、農家が一番納得できる環境を作り出すことができ、甘く、大きなスイカが出来るそうです。いくらハウスとはいえ、寒すぎては上手にスイカを作ることはできません。暑すぎず、寒すぎずの今だからこそ、「今が旬」「しかも大きい」が実現できるのです。

    ハウスというと、人工的なイメージで悪く捉える方も多いかと思いますが、そもそも農業というのは人為的なもの。ハウスも道具の一つとして、うまく使った方がいい、という良い事例でもあるでしょう。

  • 潮風を浴びた野菜はおいしい:海っ子ねぎ

    平成14年10月、千葉県の西を通過した台風21号の影響で、大量の海水を含んだ潮風が九十九里浜の野菜を直撃しました。
    多くの農作物が塩害で枯れてしまう中、ネギだけはほとんど被害がありませんでした。不思議におもった農家の方がそのネギを食べてみると、とても美味しいネギであることがわかりました。

    海水を散布、それが海っ子ねぎ

    もともと「潮風を浴びた野菜はおいしい」というお話もあり、ネギに海水を散布してみることにしたところとても美味しいネギができあがりました。それが、海っ子ねぎです。

    災害を災害で終わらせること無く、美味しい野菜の生産につなげる。農家の皆さんのたゆまぬ努力の賜物です。